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2007年11月07日

自然に教えられた気づきをたくさんの方々と共有したい

有限会社小川耕太郎∞百合子社
小川百合子さん

 夢織人第1回に登場してくださったライトスタッフの藤本邦彦さん。藤本さんは、「僕は人との出会いによって支えられて生きているんです」とおっしゃっていましたが、今回、クローズアップさせていただいた、小川百合子さんもそのおひとりとか。都会から里山に嫁ぎ、そのつなぎ役として活躍中の小川さんにお話をうかがいました。

■ティースプーン1杯に溢れるメッセージ
 「1匹の蜂が一生かかって集める蜜の量はどのくらいだと思いますか?」
と小川百合子さん。
 答えは、たったティースプーン半分でした。しかし、そのわずかな量に、たくさんのメッセージがつまっています。
「本草網目に、『山のみつ』が取り上げられているように昔から風邪や咳、貧血や疲労回復、美容や長寿の秘薬として用いられてきました。ミネラル、ビタミン、抗酸化物質がたっぷり。特に作られたものではなく自然のままのバランスで多用多種なものが含まれているのがよい働きをします。」
と話す百合子さん御自身もお肌がツヤツヤです。
 蜜蜂は昆虫の中でも一番の働き者。24時間懸垂をして体温を上昇させ蜜ロウを分泌する蜂、昆虫のなかで一番多くの卵を産む女王蜂。そのパワーの源が蜜やロイヤルゼリーです。
 しかし、加熱処理や加工段階で自然の良さが損なわれてしまうことも否定できません。そういった中で、百合子さんが出会った蜂蜜は自然をそのままパックした逸品でした。

■山の神様のお引き合わせ
 蜂蜜の発祥の地は、熊野という説もあれば、三輪山という説もありますが…いずれにしろ、神の里に伝わってきた日本古来のスローフードです。
 百合子さんがこの蜂蜜に出会ったのは、伝説の地にふさわしく熊野祭りでした。お土産に買った蜂蜜があまりにも美味しく啓示を受けたかのように中村養蜂場を探して飛んでいったのがきっかけです。まさに神様のお引き合わせでした。
 養蜂家の中村誠一さんは、もともと会社員でしたが、昔から蜜蜂と山が好きで熊野の修験者と一緒に山を歩き、山のどこにいつどんな花が咲くか熟知している方でした。「まるで蜂を家族のように可愛がり蜂の気持ちが分かる方なんです。もちろん中村さんの蜂蜜は薬を一切使わず熊野の自然がそのまま詰められています。「山の蜂蜜」は熊野の原生林に咲く樹や植物の花の蜜を集めたもので百花蜜と言われ、季節の花々との一期一会の出会いがパックされています。
 蜂が作るものに無駄なものは一切なく蜂は神様のお使いと昔から言われています。でも、現代は簡単便利なものが出来て大自然の恵みが忘れられていますね。そんな中で私達が中村さんと協力して作った蜜ロウワックスは、昔ながらの手作りで現代人の救世主になりつつあります。」

■蜜ロウワックスは、都会と山を結ぶ救世主
 じつは、百合子さんが蜂蜜や蜜ロウワックスを販売したり作ったりすることになったのは、養蜂家・中村誠一さんとの出会いももちろんですが、山を守りたいという強い願いが根底にあったからです。
 もともと百合子さんは、都会のデパートに勤めていました。尾鷲出身の耕太郎さんに出会い、嫁いだことから180度人生が変わりました。
「都会で失っていたもの、忘れ去られていた事を主人は持っていました。例えば森の木やフローリング木目を見て東西南北がすぐに分かってしまうんです。私にとって新鮮で魅力でした」
 でも、百合子さんは嫁いでからの現実は厳しいと言います。「第一次産業では、たくさん働いてもわずかな利益しか上がりません。特に山の仕事は人件費も出ない程材木の値段が下がり仕事をすれば赤字です。そして、主人が受け継ぐはずだった義父の製材業が倒産しました。」
 原因は安い輸入材でした。それに高年齢化が追い討ちをかけ、山の手入れが出来ないため、山は荒れ放題です。このままでは、山も川も海も、国土全体が駄目になってしまうでしょう。
 「山は緑のダムといわれるように、保水、涵養の力があり、特に広葉樹はその力が高く、きれいな空気や酸素の供給源です。地球温暖化にも大きく貢献しています。落ち葉の栄養分は川や海の生物を育み、森の豊かさが豊饒の海を育むことから漁師が山に木を植える運動が各地で起こっています」
 百合子さんは、山の厳しい現実に直面したことにより、夫の耕太郎さんと共に、何とか山の大切さを多くの人達に理解してもらい、都会と山を結び付けようと考案し始めました。そんなときに蜜ロウワックスのプランニングを思いついたのです。それが、都会でシックハウス症候群に苦しむ人達にも大きな朗報となったのです。

■蜜ロウワックスで山を守ろう
 「蜜ロウワックスを考えたのは、主人です。地元の小学校の内装が木で作られたというので見学に行ったのですが、仕上げが科学塗料だったんです。それでは、せっかくの木の良さが台無しですよね。木が呼吸が出来なくなってしまうのですから。それで、いい素材を探し求めるうちに自分達で作るしかないと考えるようになり、養蜂家の中村さんに相談したのです。それが地域人のコンセプトや原料のルーツが明確なワックス造りの始まりです。」
 小川さんからの呼びかけで中村さんは蜜ロウとエゴマ油だけで蜜ロウワックスを完成させます。
「蜜ロウは、木の表面に皮膜を作り、防水・防腐効果に優れています。エゴマ油は、7000年の伝統がある日本のスローフードで、木の中に浸透する事によって耐水・防腐の効果を発揮します。いずれも天然成分100%のものです。
 蜂の作るものに無駄はないと言いますが、まさに蜜ロウワックスは働き者の蜂が箱から余計に作ってしまった巣が原料で、いらないものが必要なものになってしまった訳です。
 蜜ロウワックスは、蜜ロウとエゴマ油の溶点を合わせ混ぜれば出来ます。しかし溶かすときに有機溶剤のような科学物質を用いたのでは、せっかくの森の恵みが台無しです。中村さんの作る蜜ロウワックスは全て熊野の大自然の賜物だけで出来ています。」
 この蜜ロウワックスが、シックハウス症候群などで困っている人達に喜んでもらい、そして、山を守ることにつながればと小川さん夫妻は日々山と都会を結ぶ活動をしているのです。

■シックハウス症候群は、自然の恵みを忘れ化学物質に頼る現代の病気
 「ある幼稚園で、化学物質に反応するお子さんが、床のワックス等に反応して通園できなくて困っていました。父母が話し合い、蜜ロウワックスで床を磨くようになったところ、そのお子さんも幼稚園に行かれるようになったそうです」(百合子さん)
 化学物質が生活に取り入れられてからまだ歴史が浅い人類。思いもかけないような問題がたくさん起こり始めました。アレルギー、環境ホルモンによる内分泌系の異常。それに、神経障害、切れる、イライラする、集中できない、疲れがとれない、落ち込みやすいなどの不定愁訴など。こういった症状は、化学物質過敏症あるいはシックハウス症候群といわれます。日本では潜在的な患者を含めると10人に1人ともいわれ、解決法は、化学物質のない暮らしをすること。体にためこんだ毒素を排出することです。
 科学物質は生活のあらゆる場面で人間に取り込まれますが、特に新築や改築中及び直後の住宅、シロアリ駆除剤、防虫剤、殺虫剤などが大きな原因となり、気密性の高い現代の住宅がそれに拍車をかけていると指摘されています。
 特に、床からのダメージは大きく、シックスクールの原因の約60%は科学ワックスによるものだといわれています。フローリングに用いられる防虫剤や接着剤、それにワックス。特に床からの距離が近い子どもにはダメージが大きいのです。
 こういった問題は、自然の恵みを忘れた科学に偏重する現代の歪んだ姿勢から起こっているといえるでしょう。
 小川ご夫妻は仲間と一緒に三重県の学校に使う備品を安全なものに切り替えることを提言しました。手だてとは、換気扇をつける。合成洗剤をやめて石けんに。芳香剤をやめる。花壇への農薬はやめる。そして、床のワックスは安全なものへ変えるということでした。
 そして、つい最近、三重県でその提案が受け入れられることになりました。三重県四日市の幼稚園でモデル校として取り組みに対し補助金も下りることになりました。
「人間には本来、常に自然の流動性に合わせた暮らし方がありました。でもどんどん自然とのつながりが失われ、そのため様々な問題が起こっています。私達の夢は地域全体を自然と人間が共生できる循環型社会にしていくことなんです。大きな夢かもしれません。でもこの頃蜂蜜や蜜ロウワックスを通して、消費者の方々に大変励まされます。私達の製品を使ってくださることで自然へ貢献できるから嬉しいという声を聞くと、少しずつだけれど、いい方向にきているな、尾鷲に新しい風が吹き始めたな、と思います」と百合子さんはいいます。
 環境に配慮した林業のあり方、自然と人とのつながりを提案・実行する小川ご夫妻の役割はこれからもっと大きくなることでしょう。

雑誌「anemone」2002年12月号より抜粋

投稿者 right : 2007年11月07日 15:28

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