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2007年11月07日

コットンは最も優れたエコロジー繊維

日本オーガニックコットン流通機構代表
宮崎道男さん

 幸せへの提案−愛とやさしさを育むオーガニックコットン−今回は前回に引き続いて、藤本邦彦さんのお仲間のひとりで、生産工程において化学処理をしないコットンを広めている日本オーガニックコットン流通機構の宮崎道男さんに、夢ある「もの作り」を語っていただきます。

■コットンは最も優れたエコロジー繊維
 コットンは、最もエコロジーな繊維です。そして、優れた循環型資源なのです。
 世界の綿の栽培面積は、全耕作面積の0.8%といわれていますが、非常に狭い面積で実に世界の人々が使う繊維製品の半分をまかなうことができるのです。さらにオーガニックであれば、農薬の汚染もなく、生産工程で環境を汚したり資源を枯渇させることもまったくありません。燃やしても悪いガスは出ないですし、槌に返せるものです。
 一方、他の繊維では、シルクは桑畑を作り、蚕を育て、お湯で炊いたり……と、糸にするまでの行程がかかります。さらに科学染料で色鮮やかに染めると、河川汚染にもつながります。
 麻も、叩いたり柔らかくする複雑な工程があります。羊毛は羊のための牧草地が必要で、しかも土地はやせて砂漠化していってしまいます。羊毛は1エーカーあたりで3キロから5キロしか繊維がとれません。
 しかしコットンの場合、同じ面積で600キロとれます。つまり100倍以上の収穫量となります。
 コットンの加工では、前述のように手がかからず行程が少ないため、エネルギーを使いません。また、綿は植物ですから、二酸化炭素を吸って酸素を供給してくれます。100年でも200年でも、地球を汚染することなく、逆に環境を改善するコットンは、まるで神様が裸の人類に用意してくださった特別な植物のようです。

■静電気が起きにくくUV効果も期待できる
 コットンは、あらゆる繊維の中で最も静電気が置きにくい繊維です。最近はパソコンなどの電磁波に悩む人が増えていますから、コットン製品を身に着けることは、電磁波対策にもつながるでしょう。
 また、電気毛布やアクリル毛布ではなく、オーガニックコットンの寝具でくるまると、静電気や化学物質などの不安も解消され、吸湿性に優れた天然100%の植物の力に包まれ、安らかに眠ることができます。
 生産工程だけではなく、製造工程においても化学処理をしていませんので、ふんわり柔らかで眠り心地も満点です。
 もともと綿は、赤道直下や半砂漠地域で生息する植物で、激しい温度差や強い紫外から身を守る機能を備えています。フワフワした白い綿の中に種が入っていて、遺伝子を傷つけるような有害紫外線から種を守ります。
 原種の綿は茶色で、95%以上の紫外線防止効果があります。白い綿は人工の品種改良なので、87%程度にその効果が落ちます。
 UV製品加工という科学的な処理をしなくても、UV製品として、私たちもオーガニックで帽子や手袋、傘も作っています。こんなに機能にすぐれ、手間がかからずに繊維になる植物はまずないでしょう。

■化学物質化敏症は室内空気の汚染も原因に
 日本オーガニックコットン流通機構のコットンの素晴らしさが理解され、来年のエコマークのエコロジーカタログに出ることになりました。
 実は、私が10年ほど前に初めて日本にオーガニックコットンを紹介したころは、エコロジーに対する価値が認められることがなく、やっと最近になって理解されるようになってきたのです。
 3年前に、都内の大手病院が日本初(世界で3番目)として、化学物質過敏症患者のための専門病棟を建設しました。科学物質過敏症というのはご存知かもしれませんが、身のまわりにあるさまざまな化学物質に対し、一般的には問題にならないほど微量であっても頭痛や吐き気、めまい、動悸、脱力感、皮膚炎などの症状を引き起こします。ひどい場合には、通常生活が営めなくなってしまいます。
 そのような症状の患者さんのための建築物の内装材や寝具、衣類などでも使えるものが一般市販品で見つからず、最後にたどりついた素材がオーガニックコットンだったのです。
 オーガニックコットンは、使えば使うほどその素晴らしさが分かります。新品のタオルで比較すると分かるのですが、普通のコットンタオルは水をはじき吸水力がありません。何度か洗濯して柔軟剤がとれると水分を吸収するようになり、ようやくいい感じになります。
 しかししばらく使い続けると、バリバリになります。そこでまた柔軟剤が必要になります。ところが100%のオーガニックコットンはそうはならないんですね。フワフワ感が長持ちするのです。
 これは当たり前のことで、一般のタオルは脱脂して漂白し、その後に染色して柄をつけます。その間、繊維の柔らかさはほとんどなくなってしまいます。それで、柔軟剤で仕上げるのです。
 また一般の綿の糸は、新幹線並みの高速で紡績するため、薬剤処理をして強化します。オーガニックは、ゆっくりと紡績するため、空隙という穴が空いて空気をたくさん抱き込むのです。結果として伸縮性とか暖かさで大きな差が出るのですね。
 日本オーガニックコットン流通機構のコットン製品は、化学処理をしていません。繊維が生きていて、洗い込むほどに肌になじむようになります。

■「ネムネムゴロ太」を開発したきっかけとは
 一般のぬいぐるみは、表面がアクリル繊維で中身はポリエステル綿です。また、強い染色剤や防ダニ剤などが使われているので、化学物質が皮膚の敏感な人を刺激してしまうのです。
 このことがいつも頭の片隅にありました。また、いつも気になることがありました。それは当時70歳の母親が夜ぐっすりと眠ることができなくて、悶々として睡眠薬の助けをかりているということでした。そして手触りのよいものを触っていると気持ちが落ち着き、眠くなるということを本で読んだことがありました。
 ある朝、出勤前にあわただしく食事をとっていたとき、何気なくつけたテレビに写し出された日光の森、そして東照宮を見て、『そうだ、眠りネコだ!』と思いつきました。
 それから毎日毎日夢中になって、いくつもの試作にチャレンジし、ようやく完成したのです。
 一般のぬいぐるみは石油からできた合成繊維でできているので、燃やせばガスが出ますが、『ネムネムごろ太』は綿100%ですから、その心配はありません。
 オーガニックコットン製ですから、綿の段階から無農薬で、すべての製造工程において化学処理をしていない。土を汚すこともない。そして大自然に戻って消えてゆく。環境保護のためにもなると確信しました。
 母親は、『ごろ太』を撫でながら、その気持ちよく眠る姿を見ていると、自然に眠りに誘われると言っています。若い女性たちや出産前後の妊婦さんたちにも喜ばれています。意外だったのはお、中高年の男性からも良いという評判を聞くことでした。『ごろ太』がいるだけで不思議とリラックスすると言います。
 ぬいぐるみ類は化学物質過敏症の患者さんにとって、心の癒しともなっています。このように製品を大事に思ってくださる声が届くたびに、続けてきて本当に良かったと思います。

■環境に負荷をかけないモノ作りを通して学んだ
 最初は、なかなか売れずに苦労しました。とにかく儲からないのです。しかも認証のあるオーガニックコットンは全綿生産量の0.04%しかないのです。
 一般商品に比べ、染めていない生成り色なので見劣りはするし、原料は少ないし、消費者にオーガニックコットン製品への理解が得られないし……という最悪の状況でした。
 繊維業界ではない畑違いのところから始めた自分だから、続けてこられたのでしょう。別の事業から資金を投入し、どうせ売れないなら徹底的にこだわっていいものを作ろうと続けてきたのが、この2,3年前から時代のニーズに不思議なほどピッタリと当てはまったようです。
 続けてきたお陰で、見えないこともいろいろ分かってきました。たとえば、繊維工業界では、綿を工業製品として考え、全く同じ質、色、見栄えを追求します。
 でも、綿はもともと農産物です。それを、工業製品として数値化すればするほど、科学的処理をしなくてはなりません。
 たとえば、工場で白い布を織っている隣の機械で赤い布を織っているとき、1本の赤い綿毛が白いほうに入っただけで、スーっと1本の赤い線が入ります。それで、もう不良品です。
 しかし、漂白剤があれば、赤いシミも手あかなども簡単に隠せます。私たちは一切そういうことはしないわけですから、不良品として扱われてしまうのです。
 こういったことは、繊維業界だけの話ではないでしょう。基準を満たすために、あるいは見た目をよくするために、そしてたくさん効率よく作るために、食品でも添加物を使って化学処理を行います。
 大自然の産物は常に変化するものですが、それに耐久性を求めて変化しないものにする。
 自然に沿ったライフサイクルに反する現代文明が、さまざまな問題を引き起こします。つまり、変化しないということは、いつまでもゴミが存在するということ。それがオーガニックに携わってみて、見えてきたことです。

■未来を担う子どもたちに美しい地球を手渡すため
 ここ30年前ころからの話ですが、人類始まって以来の大異変がおこりつつあります。蓄積した人工物のせいで、カエルやドジョウ、メダカなど、ついこのあいだまであたりまえにいたものが見えなくなりました。生物がすごい勢いで絶滅しているのです。
 オーガニックは『有機的な』という意味ですが、私たちは定義として、『自然そのまま』ととらえています。そうやって、一切化学処理はしないで、ただ天然石鹸で洗うだけです。
 オーガニックコットンに携わる人々は、未来を担う子どもたちに美しい地球を手渡していくために、もの作りの過程の中でどんな生きがいを感じられるか、どんな幸せを見つけられるかということを、日々の糧としています。
 オーガニックコットン製品には、『安全で安心で快適な製品作り、人にも環境にもいい社会作りを』という願いが込められています。オーガニックライフは、人や環境とのつながりを大切にする愛とかやさしさがあります。これが幸せへの提案なのです。

雑誌「anemone」2003年2月号より抜粋

投稿者 right : 2007年11月07日 15:30

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