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ストレスケア日比谷クリニック
吉家重夫
心理コンサルタント
「統一場心理学」提唱者

 

第2回 「うつについて」


 最近のニュースを見ていると、日本人の多くがうつ病やその予備軍であったりするようです。小学校の先生が病気で退職する場合の7割がうつ病だと聞いたこともありますし、サラリーマンの多くが、うつ病になる危険にさらされているという話もあります。まるで国民病と呼ぶのに相応しいほど、我が国はうつ病に侵されていると言えるかもしれません。

 私たちの心は、どうしてうつ病になるのでしょうか。そして、どうしたらうつ病は治るのでしょうか。

 まず、うつ病になってしまう人の心を図解してみましょう。うつ病になる人の多くは、かなり頑張る人なんです。「一所懸命に頑張らないといけない」とか、「他の人よりも頑張れるぞ」といった考え方をしていて、実際にも真面目に働く人です。

 図「うつ病の原理」を見てください。

 このような人は、心の中の現実世界に近いところを主に使うようになります。(図のA)



 私たちは、頑張る一方の生活をしていると、「頑張らない自分」をいつも使う心の領域から追い出してしまいます。いわば「役立たず」だと感じてしまい、そういう自分が嫌いになってしまうのです。勿論、特定の自分を嫌いになるのは、誰にでもあることです。

 しかし、余りにも長期的かつ徹底して「頑張らない自分」を捨て続けると、どんどん溜っていってしまうのです。(図B)溜ってゆくと、「頑張らない自分」の力が徐々に強くなってゆき、「いつも使う領域」に比べても劣らないくらいの存在になってしまいます。

 問題が起きるのは、そんな状況が続いているときです。40歳前後の働き盛りで、そんなときを迎える方も居られます。そのような状況で、時には耐えられないくらい「頑張れ」と職場などで言われてしまったり、圧力を感じてしまうこともあるでしょう。すると、「いつも使っていた領域」に留まることが辛くなり過ぎて底に穴があき、あろうことか意識は「頑張らない自分」或いは「いつも嫌いだった自分」の塊の中へ落ちてしまいます。(図C)つまり、一番嫌だと感じていた自分になってしまうのです。うつ病になった人は、とても自分を嫌います。自虐的、自罰的になるのは、こうした理由からなのです。

 抗うつ薬を飲むと、一時的に元気になったりぼんやりしたりして、意識は「いつも使っていた領域」に戻ることがあります。そうすると外見は、「治ったように見える」のです。

 従来の精神医学には、心そのものを解析したり表現する方法がありません。現象を表面的に捉えるしかできませんので、「治ったように見える」ことが、すなわち治ったことだと考えざるを得ないのです。これが、「うつ病は治っても再発しやすい」とか、「うつ病は、治っても脆弱性が残る」と言われてしまう原因です。

 しかし、心の二つの領域、「いつも使っていた領域」と「捨てた自分」の間に開いた穴は、塞がっていません。統一場心理学から見たとき、このような状態では本当は「うつ病は治った」などとは言えないのです。あくまでも、うつ病は治ってはいないが、一時的に症状が軽くなった状態でしかないと考えます。

 それではどうしたら良いでしょうか。

 まず、うつ病の原因を作らないことです。そのためには、最初の「頑張って心を使う段階」(図A)の状態で意識的に「頑張らないとき」を作ることです。例えば、昼は必死に働いたとしても、夜は意識的にだらだらしてみるとかです。私の知っている商社マンは、昼は職場で一番のやり手なのですが、夜家に戻ると、まるで猫のように奥さんに甘えているようです。これが、上手な心の使い方なのです。自分の心に含まれている様々な領域を、上手にできるだけ全部使うように心がけましょう。

 そうすれば、「いつも使う領域」と「頑張らない自分」の間を意識が往復し、分断を防いでくれます。心が分断されなければ、うつ病にはなりません。

 誤解をする方が多いので、心の分断と使い分けについて少しだけ説明しておきます。

 自分の心は、適当に分断されているので、その一つひとつを使い分けしやすいのだと考える人が居られますが、それは間違いです。

 心は、分断されてしまうと、使い分けが難しくなります。例えば、完全に分断された状態(図B)では、意識は、自分から「頑張らない自分の捨て場所」へ移動することなど、至難の業です。もちろん、周囲の状況に流されて自分の意思に反して移動してしまえば、今度は戻ることが困難になってしまいます。

 意識的にコントロールして自発的に使い分けるには、分断されず統合された状態が望ましいのです。

 この原理は、うつ病になってしまった場合の対処法にも使えます。

 それは、たまにでも元気な気分になったとき、ダメな自分を認めることです。「これも私の一部なんだ」と認識して、嫌わないようにすることが大切です。実は、ダメな自分の中にもとても役立つ情報も含まれているので、捨てるべきではないのです。反対に落ち込んで、どれほどダメな自分だと思っても、かつての元気な自分が無くなってしまった訳ではないことを、しっかりと理解しましょう。これが、うつ病を治す決め手になります。

 図をしっかりと見つめてください。

 もし、元気になったときにダメな自分を認め、気分が落ち込んだ時に「あの元気な心が無くなってしまった訳ではない」と理解できれば、この二つの領域を分けている壁が次第に消えてゆきます。そうするとその人は、病気になる前の自分(図AやB)よりもずっと元気で豊かな感性をもつ、心全体を使える自分(図D)になっていることに気づくでしょう。誰でも、その人のもっている心を最大限に使いこなすには、このような状態が望ましいのです。

 こうなると、心全体が分断されず一つになっていますので、うつ病になる原因がありません。これが、統一場心理学で言う「うつ病が治った状態」なのです。この状態は、ストレスにも強く、強靭な精神の持ち主だと言われるほどのものなのです。

 もう一つ、心を統合するために役立つ、更に簡単な方法をご紹介しておきます。それは、軽く汗をかく程度の運動をすることです。私たちの心は、身体が一体感を感じることで良い影響を受けます。これはうつ病だけではなくて、人によっては、かなり重症の精神疾患をもつ場合でも、適度な運動によって大きく改善することも珍しくないのです。

 私たちの心と身体は、表裏一体のものです。身体が元気に動き、周囲の世界を新鮮に感じ取り、感覚的に一体感を味わうことができると、それは心の統合にもとても良い影響を与えるものなのです。

 もし全身運動ができないのであれば、例えば左腕で負荷を掛けながら、右腕を曲げたり伸ばしたりして、次に反対に右手で負荷を掛けながら左手を動かします。このように、一部の筋肉を使うだけで全身の雰囲気が変化し、効果があるのです。

 また人間は、寒くなると心身ともに縮こまる性質があります。特にうつ病の方は、周囲の気温が下がると、なかなか調子が良くなりにくい状況になってしまいます。ですので、気温の変化に十分注意して、温かくしていた方が良いでしょう。

 勿論、こうしたことを知らずにあるレベルを超えて重いうつ状態にまでなってしまうと、なかなか自分一人では動けなくなってしまいます。そんなときは、相性の良い専門家を探して、相談してください。

 最近ではご存知の方も多いようですが、うつ病などで落ち込んでいる方については、やたらに励まさない方が安全です。落ち込んだ状態にある人は、急に励まされると気持のバランスを失いやすいからです。最悪の状況では、強く励まされた方が自殺をしてしまった例なども知られていますので、この点だけは注意してください。

 しかし、もしここに書いたことを覚えていて、ご自身で軽い状態のときに気づくことができれば、自分一人でも十分に対処可能なものなのです。自分を嫌っていたり、自分のしたことがいつまでも不愉快だったり、自分自身を拒絶してしまっていたら、それは心の分断が始まったサインだと思ってください。人の心は、ご本人が一番良く知っているものなので、自分でケアするのが自然なのです。


 今回は、以前から知られていた一般的なうつ病について解説してみました。次回は、現代日本に増えている「新型うつ病」と呼ばれているものについて説明します。

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