今まで「うつ」と一括りにされてきた心の不調は、実は原因や現れ方によって大きく二つに分けられます。
同じように落ち込んで見えても、必要なケアはそれぞれ異なるのです。
「うつ」をめぐる常識は、時代とともに変わってきました。かつては、気分の落ち込みや意欲低下、不眠などを一括りに「うつ病」と捉え、同じような治療が行われることも少なくありませんでした。しかし現在では、原因や症状の現れ方から見極めることが重視されています。そこで今回は、わかりやすく二つの傾向に分けて紹介します。
一つは、明確なきっかけがないまま、気分や意欲、喜びが失われていく「気分障害」系。うつ病、持続性抑うつ障害、双極性障害などがあります。
もう一つは、仕事や家庭、人間関係、介護などをきっかけに、心身が限界を迎える「ストレス障害」系。適応障害、急性ストレス障害、PTSDなどが含まれます。
どちらも一見、同じように落ち込んで見えても、原因や状態は異なります。不調の入口を見極め、その人に合った休養や治療、サポートの仕方を選ぶことが大切です。
気分障害系の不調は、脳と体を動かすエネルギーが底をついている状態です。気力で頑張ろうとしても、かえって消耗を深めてしまいます。特に不調の初期に大切なのは、無理に動くことではなく、休みながら失われたエネルギーを少しずつ補うこと。食事や生活環境を整え、五感が心地よいと感じる時間を増やしながら、回復の土台をつくりましょう。
なかでも食事は、心身を動かす大切なエネルギー源です。お吸い物や湯豆腐など、温かく消化のよいものを取り入れましょう。
腸と脳は互いに影響し合うため、胃腸をいたわることは、心の安定を支えることにもつながります。
同時に、頭を休めることも大切です。難しい本やニュースなど、頭を使う刺激から少し離れ、早めに心身を休ませましょう。「温かい」「おいしい」「肌触りがよい」と感じられる時間を増やし、好きな香りや柔らかな音楽、心地よい寝具など、五感からもエネルギーを満たしていきましょう。
ストレス障害系の不調は、心身の緊張が続き、体に力がこもっている状態です。頑張るのではなく、滞ったエネルギーを外へ逃がし、過剰に働く自律神経のアクセルを緩めることが大切です。
食事では、特に筋肉や神経の正常な働きを支えるマグネシウムを意識しましょう。玄米、納豆などの大豆製品、わかめやひじきなどの海藻類に多く含まれ、緊張した心と体を内側からほぐしてくれます。
暑い夏で食欲が落ちているときは、レモンやゆずなどの柑橘類、シソ、セロリなどの香りを活用するのも一案です。ポン酢や梅干しの酸味を添えると食事が進み、気分転換にもつながります。
ため息も不必要に我慢することはありません。逆に巡りを高めることにもなります。
「はぁーっ」と口から長く息を吐くと、横隔膜や肩の力が抜け、呼吸が軽いやすくなります。吸うより、吐く時間を長めにしましょう。
何よりおすすめなのは運動。散歩や軽いストレッチなど、一定のリズムで心地よく動く程度がおすすめです。景色を眺めながら歩く、腕や肩をゆっくり揺らすなど、小さな「ゆらぎ」を与えることで、こわばった心身を解きほぐすことになるのです。
心の不調は、決して心が弱いからでも、年齢のせいでもありません。大切な家族や仕事、周りの人のために頑張ってきた心と体が、「少し自分を大事にしてね」と伝える心からのSOSです。そんなとき周囲は、本人が自分なりの出口を見つけ、自らを労われるよう、焦らずそっと寄り添いましょう。ほんの少しのきっかけから、心の霧が晴れていくこともあります。
どちらの場合も無理に元気づけたり、答えを急がせたりする必要はありません。安心して休める時間と場所をつくり、「あなたの味方だよ」と伝え続けることが、回復への大きな支えになります。
※当記事は弊社発行誌『イキイキ生活通信』に掲載された内容を改編・再載しております。
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