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免疫と心の関係性

皆さんは「テストの前になると風邪をひく」「嫌なことがあるとお腹が痛む」などを経験したことがありませんか?それらは普段働いているはずの免疫がストレス要因でうまく働かなくなったからに他なりません。今回はストレスと免疫の関わりが明確になってきたその仕組みについて、まとめてみました。

1.自律神経(交感神経)の乱れ

ストレスで免疫力が低下する一番の原因は、自律神経の乱れです。自律神経には、交感神経と副交感神経があり、交感神経が過剰になると免疫機能は低下します。基本的に脳はストレスを感じると、身体を守るため、交感神経を刺激してホルモンの分泌を活発化、血圧や心拍数を上昇させて対処します。

2.粘膜・皮膚抗体の濃度低下

抗体とは、目や口・鼻・腸などの粘膜で働く異物に対抗するタンパク質のこと。いわば免疫機能の最前線です。その中でもIgA抗体はすでに体内に侵入したウイルスの働きを抑える、弱らせる働きがあり、抗体の濃度は心の状態で上下することがわかっています。ストレスで急にお腹が痛くなったり、腫物ができたりするのは、IgA抗体の濃度が薄まることが原因です。

「Check1.ストレス蓄積要因で起こる身体の病気」

検査をして明確な異常が無い時、医者に「ストレスの影響」と言われた場合は「ストレスによる免疫低下が原因かも」という意味合いがあるそうです。

▼心疾患
心不全患者の10~40%がうつを発症しており、うつ病は心疾患の発症原因になりうる、合併症であると定義する専門家もいます。

▼高血圧
精神的要因で交感神経が高まると、末梢の血管を収縮。緊張による心拍数の増大と相まって、血圧を大幅に高めてしまいます。

▼糖尿病
ストレスがあると、気持ちを落ち着かせるため、体内で血糖の分泌が増えます。心配症の人は血糖値が高いことが多いそうです。

▼高血圧
神経からのストレス刺激が常態化してしまうと、特に胃のがん細胞が成長する、というメカニズムが明らかになっています。

「Check2.有害物質を除去するNK細胞に影響大」

免疫細胞の中で有害物質の発見・一次攻撃を担当し、自然免疫の中心でもある「ナチュラルキラー(NK)細胞」の働きを高めるにはストレスケアが必須です。

NK細胞は全身をパトロールしながら、がん細胞やウイルス感染細胞などを見つけ次第、素早く攻撃するリンパ球(自然免疫)です。このNK細胞のエネルギーとなっているのが間脳から発せられる善玉ペプチドという物質。この物質は笑ったり、心が幸せを感じたりすることで分泌されます。血液やリンパ液に乗って全身に運ばれた善玉ペプチドは、同じく全身を巡回しているNK細胞の表面に付着することで、免疫の働きを高めます。

逆にマイナスの情報を受け取ると、善玉ペプチドの分泌が減ってしまうため、NK細胞の有害物質を発見する力もパワーダウン。ウイルスなどの感染症にかかりやすくなってしまうのです。

「Check3.免疫と心の研究結果」

心と免疫の関係が調べられるようになったのは2000年代を過ぎてから。現在、様々な研究結果が集まってきています。

▼腸内でおこなう”免疫”と”精神疾患”のケア
親しい人と話したり、好きな人と手を握った時に幸せだと感じたりするのは、神経伝達物質のひとつ「セロトニン」の作用によるものです。そのほとんどが腸内に生きている数兆もの細菌によってつくられていることがわかってきました(腸脳相関)。この発見で、腸は免疫細胞と抗うつ成分の両方を生み出しているということになり、腸の状態が心身のバロメーターになり得ます。今後、腸の仕組みがさらに解明されることによって、治療が難しかった免疫疾患や心の病気のケア法が確立されることが期待されています。

▼高齢者は大きなストレスで一気に免疫力が低下
高齢者が強い悲しみやショックを受けると、実際に深刻な病気を発症する確率が高まるとの研究結果がイギリスで発表されました。英バーミンガム大学の研究チームが悲しみやショックの場面でどれほどの免疫機能が働くのか、高齢者と18~45歳とを比較したところ、免疫細胞(マクロファージ、各種リンパ球)が極端に減り、様々な病気を引き起こしていることがわかりました。これは配偶者や友人の死に直面しやすい高齢者には、改めて免疫機能へのサポートが必要であることを示唆しています。

▼食生活で免疫細胞を増やしイライラを予防
内モンゴル農業大学が大規模調査を行い「善玉菌が腸内細菌の安定を維持し、長期航海中の船員のイライラやストレスが解消できた」という研究成果を発表し話題になりました。海上の食事は塩分が高く、栄養が偏り腸内細菌が乱れます。実験では船員の腸内細菌を食事によって善玉優位に調整し、免疫細胞を増やすことで、航海中のイライラやストレスを軽減させることに成功。腸ケア=免疫細胞を増やす生活習慣は、ストレス環境における心身の健康管理のスタンダートとなってきています。

LET'S TRY!心=免疫を同時に元気にする5つの生活習慣

心と免疫の関係が調べられるようになったのは2000年代を過ぎてから。現在、様々な研究結果が集まってきています。

(1)日々の大笑いが、免疫細胞の働きを各段に高める
「笑う」「楽しいことをする」など心身のリラックス状態は免疫細胞を活発化させることに繋がります。笑いと免疫の関係は特に日本で研究が進んでおり、大阪国際がんセンターが落語や漫才を2か月間で4回見たがん患者と見なかった患者のIgA抗体の変化を調査。すると、腸が免疫細胞を作り出す量が平均で1.3倍に増えたそうです。

(2) ハーブやスパイスを食事に取り入れる
嗅覚への心地よい刺激は、心のリラックス効果があり、食材としても代謝促進や抗菌作用があります。

(3) 早寝・早起きを心掛ける
「早寝早起きは三文の徳」これは免疫にも言えるようです。 睡眠不足はNK細胞の働きを減退させ、夜型の生活をしている人はNK細胞の働きが弱まることもわかっています。

(4) 頑張り過ぎない
「最近頑張り過ぎてるなあ…」と心身の疲労を明確に感じたら、それはNK細胞からのSOS ! 休息をとりましょう。

(5) 太陽の光で腸の働きが活性化
日中、適度に太陽光を浴びてセロトニンを分泌させると、腸内の働きも連動して活性化。免疫が活発に働きます。

※当記事はイキイキ生活通信141号に掲載された内容を再載しております。

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