イキイキ生活通信/読み物
Difference between
Adjustment Disorder and Depression.

適応障害とうつ病の違い

「甘え」と混同されやすく発見が遅れる適応障害

メンタルヘルスで難しいのは、病気への正しい理解を得ることです。代表的な心の病であるうつ病と比べ、適応障害はそれほど知名度はありません。なぜなら常に症状が出続けるうつ病と比較して、ストレスから離れていると不具合が発症しないため、甘えなどと勘違いされて、理解が得られないままになっていることが多いからです。

しかし、どちらもストレスに対して我慢を重ね、心が限界を超えた時に発症してしまう早急にケアすべき心の失調の一つ。しかも発症要因で圧倒的に多いのは、ハラスメントによる職場でのトラブルや、仕事量の多さです。労働環境が不安定な今、特に注意すべき症状となっているのです。

適応障害の症状の特徴

(1.抑うつ気分)
強いストレスのかかる事象があった後3ヵ月以内で、気力に普段と違う何らかの変化(落ち込みなど)を感じるようになります。


(2.情緒不安定)
ストレス環境内では抑うつ気分に加え、平常とは異なる問題行動(遅刻欠勤、暴言、虚偽の発言など)が思わず出たりします。


(3.頭痛や動悸)
ストレス環境に近づくと突如として身体症状を発症します。そこから離れると症状はすぐに治まることが多くあります。


(4.嫌悪感が薄い)
うつ病は無気力な自分を責めさらに落ち込むことがありますが、適応障害は本人の中に罪悪感が生まれにくいと言われています。

診断基準はストレス原因が明確であること

誰もが仕事をする上でストレスに適応しながら生活をしています。しかし、ストレスへの適応能力は人それぞれであり、その力が弱っている心の状態こそが適応障害です。
実際に適応障害と診断された人は、5年後には40%以上の人がうつ病などの診断名に変更されるという実態があるため、どの精神疾患にもあてはまらない、心の病の前段階として扱われることもあります。

ただし他の精神疾患と大きく違うのは、発症の原因が明確であり、その人にあった適切なケア法を行えば、半年以内に症状が治まることから、心の失調の中でも回復しやすいものとされています。
深刻化してうつ病となると、薬を使った長期的な治療となりやすいため、回復には時間がかかります。そのため、適応障害は早期発見、早期治療を意識しましょう。適応障害は現在、働く独身女性を中心に増えているため、フェア・マネジメント(雇用者と労働者が対等に働き続けることができる組織づくり)の観点から、治療に積極的な企業も出てきています。

まずは自分で解決!適応障害かも?と思ったら……

人それぞれですが、今いる環境が苦しいと感じる方は、まずは以下の対処法を試してみましょう。

・目の前のストレス要因をひとまず取り除いてみる
治療に薬が有効ではない適応障害は、ストレス環境から離れることがケアの基本となります。具体的にはストレス原因を減らす、もしくは完全に無くしてみることです。忙しすぎる場合は業務量を減らしたり、人間関係がつらい場合は、その人と距離を置いたりしてみましょう。


・ストレスに負けない「心の耐性」を身につける
働く環境を変えることが難しい場合は、次にストレス耐性をつけることを考えてみましょう。適応障害の症状は他のことで自信をつけると改善に向かうことがあります。自ら興味のあるスキルを学ぶ、本を読む、ジムに通うなど、小さな達成感の積み重ねは症状緩和に役立ちます。


・つらい仕事の中に楽しむためのリズムをつくる
ストレス環境の中で、自分の楽しみを習慣化することも症状緩和に役立ちます。例えば休憩時間に好きなお茶やおやつでリラックスしたり、季節単位で旅行休暇をとったりするのはおすすめです。仕事の後の友人や家族の時間を大切にすることでも、心に前向きなリズムが生まれます。


・【休養】 一度離れるだけで解決に繋がることも
職場が原因で適応障害と診断されても、このまま働き続けたいという人は多いと思います。しかし、どんな病も、回復のためには、まずは休養が前提です。その環境で生きていくためにも「休む」決断をしましょう。一度、ストレス要因から心を離すだけで、結果的に適応障害を乗り越える方は多くいます。それでも難しい場合は、休職や転職も選択肢に入るかもしれません。


・【相談】 信頼できる人や専門家を頼ろう
自らストレスを排除しようしても、思うような結果にならない可能性もあります。仕事や生活に支障が出て緊急を要する場合は、信頼できる家族や友人、産業医、カウンセラー等に頼ってみましょう。日本では心の悩みを人や会社に打ち明ける文化はまだ成熟していませんが、今後、心の健康を保ち続けるための必要な勇気、と考えて思い切って相談してみましょう。


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※当記事は弊社発行誌『イキイキ生活通信』に掲載された内容を再載しております。

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