イキイキ生活通信/読み物
Three immune systems for winter.

冬を乗り切る3つの免疫

寒くなるとかかりやすくなる感染症。冬は気温低下や空気乾燥などウイルスが活性化する条件が揃い、ウイルスや細菌に対する戦う力「免疫力」が弱まりやすい季節です。

まだまだ感染症対策が求められる状況の中、この時期を乗り切るためには、普段の生活習慣の中で、頑張る免疫をサポートしてあげる必要があるのです。随分と知られるようになりましたが、人間は種類の異なる3つの免疫力によって細菌やウイルスを退治しています。3種類、それぞれの役割とサポート方法について、まずは確認していきましょう。

粘膜免疫 / 湿度・食生活が影響する最初の防御機能

細菌やウイルスは、まず、鼻、のど、気道、腸などの粘膜に付着し、その後血液中へ入っていきます。ウイルスのほとんどが粘膜を通って体内で増殖するため、粘膜はその侵入を防ぐための「粘液」を分泌し続けるのです。

この粘液の中には、病原体やウイルスが持っている毒素を無効化するIgA抗体という物質が含まれていて、これを粘膜免疫と言います。この一段階目の免疫作用で異物を無毒化できれば体内に侵入して問題はなく、次の自然免疫、獲得免疫の出番もありません。
現在検証中ですが新型コロナウイルスに関して、日本人に無症状の人が多いのは、粘液中のIgA抗体が欧米人と比べ圧倒的に多いからとも言われています。

ただしIgA抗体は、粘膜が分泌する粘液量がある程度ないとウイルスの処理を滞らせてしまいます。そのためにもまずは湿度の管理や水分補給を忘れずに!そして粘液の材料となるたんぱく質や各種ビタミンの補給が大切です。糖質や塩分過多だと粘液の分泌が減ってしまい、結果的に粘膜免疫の働きが下がります。
近年たんぱく質補給が重要視されるのは、この粘膜免疫を活性化させる意味合いも含みます。

自然免疫 / 腸で訓練される免疫機能

粘膜免疫を突破した病原体が身体に侵入した際に、速やかに反応して退治してくれるのが自然免疫です。これは身体を守るために人に生まれつき備わっている防衛システムで、血液とリンパ液を巡る免疫細胞(樹状細胞、マクロファージなど)がその役割を果たします。また免疫細胞は傷ついた組織があれば、それを見つけて修復する指示を出す役目も担っていて、病後、身体が元気になっていくのはこの自然免疫の働きに他なりません。

自然免疫は、これまで何をしても強くならないと考えられてきました。ところが近年、これら自然免疫が病原体と的確に戦えるよう腸内で訓練されていることが明らかになったのです。

例えばコロナ禍の初期、BCGが新型コロナに効いている!という噂を聞いたことがありませんか?これもあながち的外れな説ではありません。幼少期に取り込んだ異物(BCG)には、自然免疫が長い時間をかけて訓練する材料となり、それがコロナウイルスの重症化率低下にもつながる可能性が指摘されています。

これは普段から様々な弱毒の菌を、ある程度身体に入れておいて自然免疫を訓練させておくことで、毒性の高いウイルスや新型ウイルスといった幅広い病原体の働きを弱める可能性があるということです。

この働きは当然若さを保つにも有効で、抗菌を徹底しすぎて弱毒の菌が腸内にほとんど入らなかったり、腸が荒れていると、自然免疫が鍛えられずに老化が早まる懸念があります。

獲得免疫 / 生活習慣や年齢によって影響

獲得免疫とは自然免疫での防御をかいくぐって病原体が増殖を始めた時に活躍するいわば最後の砦、強力な殺傷力を持っています。ただこの免疫は攻撃力が高い分とてもデリケート。対象のウイルスに一度感染し、その攻撃法を学習した後にしか働かないため、免疫反応の速度は遅いと言えます。

また獲得免疫は自律神経と深く結びついており、特に睡眠中に強化されるため、睡眠が十分にとれていないと働きは大きく低下します。研究では平均睡眠時間7時間以下の人は風邪をひく確率が、睡眠時間の長い人の3倍も高まるそうです。ワクチンが人によって効く効かないと議論されるのは、この繊細な獲得免疫の性質によるものです。

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※当記事は弊社発行誌『イキイキ生活通信』に掲載された内容を再載しております。

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