酒井先生(以下酒井) 背景にはまず高齢化があるでしょうね。脳の神経組織が加齢によって変化していったときに発症する問題として、血管障害、動脈硬化や脳梗塞などが老人性の普遍的な症状として一般的に認知されていますが、うつは今までそれほど認知されていませんでした。
しかし脳の加齢に関してその中の一つの症状がうつと関係があります。例えば一番症状の多いものでいうと脳梗塞後のうつというものがあります。
酒井 いえ、加齢による小さい脳梗塞というのはそれこそ無限に発見されるわけですね。極端に言えばある年齢を超えれば全員小さい脳梗塞があってもおかしくないほどです。ただ、老人性うつは脳梗塞というような生物学的な側面以外にも、社会的な側面も関連しています。
昔は孫に囲まれていることが老人のいい姿だったわけです。孫をかわいがることで、孫からエネルギーをもらっているようなものでそれが少子化や核家族化が原因となって次の世代の成長を見守るという老人の一番の喜びが失われていることがあると思います。
もう一つ、日本人は老人になってから遊ぶということが得意ではないということが老人性うつの増える要因かもしれません。ヨーロッパ人などは老後をどうやって過ごすかと言うことが人生の計画の一部に入っているわけです。ところが日本人は、老後の過ごし方といえば経済的なゆとりなどが先にきてそれ以外の自由な発想が中々ないんです。
昔は老人、子供達が参加できるような町内会等の集まりがたくさんあって、それが日本のいいところでした。でも今はそういった集まりは少なくなっていますよね。心理的な側面でも、社会構成的な側面でもうつになりやすいわけです。
これは海外でも同様で、福祉が充実しているスウェーデンの老人の自殺も実は目立っています。結局環境的に孤独になってしまう人がたくさんいるわけで、脳の生物的な原因と心理学的な原因と社会共同体の原因といいましょうか、そのような問題が3つ重なって、以前に比べてうつになりやすいのではないでしょうか。
酒井 そこが難しいところです。脳の健康を中心に考える食生活というのは、若い時からの積み重ねが最も重要になるわけです。 その結果が老人の脳となるわけですから、短い期間の食生活で語るのは難しいのですが、最終的に防ぐ手段がない訳ではないんです。
例えば主食のパンや米を胚芽入りのものにすることでも随分違います。あと大事なことは、取れたてのものを食べるということです。都会で生活している人には中々難しい問題ですが、野菜、果物、肉、魚それぞれに鮮度があるので、なるべく新鮮なものを食べる、ということによっても変わってくると思います。
老人のうつと言っているけれども、老人でもイライラしている人が結構いるんです。イライラするというのはまだエネルギーが残っているわけです。
しかし、環境や身体の都合でそれをうまく発揮できない。例えば自殺すると言うことは、エネルギーがないとできないわけですから、そういうエネルギーを緩和するということはすごく重要なんです。老人はなんとなく静かな、というイメージがありますが、老人の介護の現場などでは、心配性になったり興奮しやすくなったりと、お年寄りは感情の振れ幅が大きいとして扱っています。
頭はハッキリしているけれども、体が衰えてくるごとに自分の身体感覚がいうことをきかなくなる……、それはかなりイライラしてくることだと思います。そういった状態には本当にヌーススピリッツがいいと思います。
酒井 今の管理職と言うのは結構下からも評価されてしまうので、昔のように自分の思うようにいかなくなってきたわけです。困ったときに助けてもらえるか、目をかけてくれる人がいるかなどが重要になります。責任が重くなっていく一方で周りのサポートも無くて、その結果真面目な人はうつになってしまうんです。少し不真面目な方がうつになりにくいんじゃないでしょうか(笑)
酒井 老人の場合、薬の有効性はかなり低くなると思います。一つは(薬の量を)十分に使えないと言うこと、もう一つは環境が良い方向に変化しにくいことです。配偶者が亡くなるといった悲しい出来事は増えても、良いことは起こりにくいですよね。それだと、薬は効きにくくなってくるわけです。
あと薬の副作用には便秘気味になるか、下痢気味になるか二つあるんです。便秘が起こりやすくなるようなものは特にお年寄りには厳しい。基本的に薬は腸にダイレクトに働くわけですので……。
酒井 基本的に腸の運動を適正にすることが重要なので、腸の運動をよくするものですね。
酒井 いえ、安易な食物繊維の効果は幻想じゃないかと思うんですよ。食物繊維を摂って、それで腸の運動が良くなるかと言ったら、そんな単純なものではないです。食生活はライフスタイルに近いわけですので、すぐに大幅な改善は難しい。
それよりもキトサンで腸の運動を最適化することが一番早い方法だと思います。
酒井 はい。その点ではキトサン素材でつくられている「ヌーススピリッツ」や「ヌースアイ」は老人性うつの改善に役立つと言ってよいでしょう。
1951年東京生まれ。東京大学文学部卒業、筑波大学医学研究科博士課程修了。
精神科医、医学博士、日本医師会認定産業医、臨床心理士。
現在、ストレスケア日比谷クリニック院長。おもに心身症、摂食障害、気分障害(うつ病)、強迫性障害などの治療に従事。