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2009年11月 5日

チェ28歳の革命

人間は一体どこに向かって、一体何をしようとしているのか?
今回のヌースDEシネマは「チェ28歳の革命」を題材に
ヌーソロジーの独自な視点で語っていただきます。



【作品紹介】
 偉大な革命家でカリスマ的存在ともなっているチェ・ゲバラの、闘士としての半生を2部作で描く歴史ドラマの前編。フィデル・カストロと出会ったチェ・ゲバラが、キューバ革命へと突き進む過程がドラマチックに展開される。監督と主演は『トラフィック』でも数々の映画賞に輝いたスティーヴン・ソダーバーグとベニチオ・デル・トロ。フィデル・カストロは『ウェルカム!ヘヴン』のデミアン・ビチルが演じる。俳優たちの熱演とともにリアルに描かれたゲリラ戦にも注目。

【ストーリー】1955年貧しい人々を助けようと志す若き医師のチェ・ゲバラ(ベニチオ・デル・トロ)は、放浪中のメキシコでフィデル・カストロ(デミアン・ビチル)と運命的な出会いを果たす。キューバの革命を画策するカストロに共感したチェ・ゲバラはすぐにゲリラ戦の指揮を執るようになる。
 (シネマトゥデイより)

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藤本 今回紹介する映画は、アルゼンチン生まれの医師でキューバ革命を成功に導いたゲリラ指導者、チェ・ゲバラの物語で『チェ28歳の革命』です。この歴史的事件は、半世紀前、ちょうど僕らが生まれたころ(1958年)に起きました。日本では戦後13年が経ち、戦後復興を果し経済成長めざましい時代です。このヌースDEシネマで紹介した日本映画『オールウェイズ・三丁目の夕日』と同じ時期です。翌年には、東京タワーが完成していますね。同時期に、キューバでは革命が行われていたのですね。

半田 僕らが生まれた頃だけど、当時はまだまだ世界が右に行くか左に行くか皆目見当もつかない頃だったんだよね。ソビエトや中国の脅威も半端じゃなく強くて、世界は共産圏と自由圏でまっぷたつに裂かれていた時代だったよね。

藤本 日本は第二次世界大戦後に、アメリカの支配下に置かれたわけですが、もしかしたらソ連の支配下に置かれていたり、南北二つに分かれていたかもしれませんよね。アメリカを代表とする資本主義とソ連を代表とする共産主義の戦いは、全世界を巻き込んで行きました。この二つのイデオロギーを、ヌーソロジーの観点からは、どのように捉えられるのですか?

半田 ビオスとゾーエーの戦いだね。自然の力には二つの種類があって、自然が持った諸力を物質的なエネルギーで統括しようとして働く力の流れと、精神的なエネルギーで統括しようとして働く力の流れとがあるんだ。僕は前者の力をビオスと呼んで、後者をゾーエーと呼んでる。この両者は人間の欲望に対する制御の仕方が根本的に違うんだ。共産主義は人間の欲望を国家が理性でコントロールしようとするでしょ。つまり、欲望を生産量とかの数字ではじいて物質的に制御しようとする。でも、資本主義は違う。むしろ、資本主義は欲望に生産の方が制御されてしまうような仕組みを持っている。その意味では資本主義は人間の個々の精神を理性によって飼いならすことなく、自由に放流させているわけだ。その分暴走もするけど、国家に欲望を管理されるよりまだ少しはマシだね。

藤本 共産主義が物質的統括で、資本主義が精神的統括ですね。キューバ革命は、アメリカの資本主義に対抗して、共産主義を掲げて戦いましたが、資本主義であれ共産主義であれ、常に光と影が存在するように、権力を持つ者と持たざる者・搾取する者と搾取される者・富める者と貧しき者・・・・に別れるのは、イデオロギーに関係なく『人間の性』ですね。革命が起こるのは、抑圧される側が抑圧を強いる側への反乱と考えられますよね。

半田 まぁ、月並みな言い方をすると保守と革新だね。体制というのは一度築かれるとどうしても体制を維持しようと躍起になるよね。つまり変化に対して臆病になるわけだ。しかし、変化がなくなると体制は必ず腐敗していく。その意味で歴史は常に変化を避けようとする精神と変化し続けて行こうとする精神のせめぎ合いで成長していて、革命というのは言ってみれば、そのせめぎ合いの結果として起こる相転移のようなものだと思うな。

藤本 これまで世界中で数々の革命が行われてきました。ほとんどの革命には武力をともないますよね。計り知れない人間の死がそこにはあります。革命による「人間の成長」とは何ですか?人間が成長し続けるために今からも革命は必要なのですか?

半田 もともと革命の語源は「星の回転」という意味のevolutionから来ているんだ。革命はrevolutionだから、re-evolutionで「再び星を回転させる」という意味になる。古代ギリシアの哲学者たちにとって星の回転とは「創造」を意味してた。つまり世界を創造するということだ。だから、真の革命というのは政治の体制が変わるなんてちっぽけな意味じゃないんだ。人間という体制自体なり、人間自体が能動者へと変身することなんだよね。その意味で言えば、人間は懲りることなく何度も殺し合いをやって、オレが一番を繰り返してきているわけだから、人間の体制を頑なに固辞し続けてきている。つまり、真の革命なんてものは未だに一度も起こったことはないってことだよ。

藤本 なるほど!真の革命は、未だかつて起こっていない。ではこれから先、真の革命は起こるのでしょうか?半田さんの著書「2013人類が神を見日」で書かれていることは、人間の体制を変える真の革命のことを書かれているのですね。今2009年ですから、あと4年で2013年です。アメリカでは初めての黒人の大統領が誕生し、日本では政権交代が行われました。友愛を掲げる鳩山総理は、国連会議で「核の廃絶・温暖化の防止」など世界の人間のテーマを演説の議題としましたよね。真の革命が行われる兆しが見えてきているのでしょうか?

半田 ブッシュ-小泉体制からオバマ-鳩山体制への移行は兆しと十分に言えると思うよ。第一5年前に黒人大統領と鳩山さんが日米首脳会談をやるなんて誰も予想できなかったんじゃないか。それほど時代は今、ものすごいスピードで動いてるってことだよ。鳩山さんに関して言えば、一貫して「友愛」を説き続けているでしょ。「友愛」ってのはね、性愛や家族愛や国家愛とは全く次元が違うもので、人間の体制を変えるためには最も必要なものだと思ってるんだ。性愛や家族愛や国家愛は言うなれば自己愛の延長のようなものでしょ。だから、さっきの言い方をすれば保守的な愛なんだよね。でも、友愛は全くの他人同士が男であれ女であれ同性愛者であれ、直接、関係を結び合える愛だよね。人間の体制に革命を起こすためには最も大事なもののような気がするよね。いわば革新的な愛だ。

藤本 この映画の中で、チェ・ゲバラが記者のインタビューに答えるシーンがありました。「革命家の資質に一番大切なものは何か?」という質問に対し、それは「愛」だと答えていました。彼の言う「愛」とは「友愛」だったのかも知れませんね。鳩山総理は、演説の中で、「友愛」とは、他者を理解し合うようなことを言っていたと思います。自己と他者を統合することが真の革命なんですね。

半田 自己と他者がもし真の友愛で結ばれたら,世界は回転を起こして、新たな宇宙の創造が起きるはずだよ。それがrevolutionのほんとうの意味だと考えるといいよ。

藤本 新しい宇宙の創造に向けて、未だかつて行なわれなかった「真の革命」を起こす時が来るんですね。その為にも僕ら自身が変革することが大事ですね。そのことを肝に銘じて、これからの人生を考えて生きて行きたいと思います。今まで15回にわたり連載してきました「ヌースDEシネマ」は、半田さんのレクチャー再開を踏まえて、残念ながら、今回が最終回になりました。いろいろとありがとうございました。

半田 こちらこそありがとうございました。ほとんど映画とは関係ないことばかりダベッてきたみたいで大変申し訳なく思ってます。でも個人的にはとても楽しめました。

藤本 僕もいろいろとお話を伺えて凄く楽しかったです。半田さんの映画解説を聞いていると映画の観かたが変ってきましたよ。連載は終わりますが、たまにはまたやりましょうね!

半田 また違う企画ができたら呼んで下さい。ライトスタッフのますますの発展を願っています。あっ、あと、今年の8月から福岡で5年ぶりにヌースレクチャーを再開したんだよね。呼称も「ヌース理論」から「ヌーソロジー」に改め、かなりバージョンアップしたヌースワールドを皆さんにご紹介していくことになると思います。2013年以降、人間の世界観や価値観がどのように変化して行くのか--ヌーソロジーの観点から見ると、アッと驚くような大変革が待ってるんだけど、その新世界について以前よりももっと具体的に話をしていくつもりです。レクチャーのライブDVDも発売していますので、興味がある方は是非、ご覧になられてみて下さい。むちゃくちゃ面白いですよ(笑)。藤本さん、読者の皆さん、長い間、どうもありがとうございました!!

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